今度のCOPは何のコップ!?
環境保護に関心を持つ人たちが今騒いでいることの一つに、COP10というのがあります。これは「コップ、てん」と読み、正確には、生物多様性条約・第10回「締約国会議」のことです。以前に「COP3」だとか「京都議定書」などとマスコミが騒いでいたCOPは、地球温暖化への取り組みについて協議する「気候変動枠組条約」のコップで、今騒いでいる方のCOPは「生物多様性条約」のコップです。コップはコップでも、実は種類が違いました。「コップ〜、コップ〜」とビールの瓶だけ先に来て、コップがなくて飲めないで騒いでいる酔っぱらいになってはいけませんね。関係者やマスコミには、もっとわかりやすく伝えて欲しいと思います。
で、COP10がどうしたのかと言いますと、再来年の2010年(10月18日より)に日本の名古屋での開催が決まったのだそうです。まだまだ博覧会景気に湧く?名古屋での、今度は環境系の国際会議の開催で、地元ではすでにプレイベントなども開かれています。どうかオリンピックや博覧会でも開かれるようなイベントいっぱいの騒ぎ方をするんじゃなくて、生物の多様性がなぜ大切で、多様性の保全や回復に向けた、具体的な取り組みが進むことを期待したいです。
では「生物の多様性がなぜ必要なのか」。環境省のホームページから要約すると「すべての生命の存立基盤」(酸素の供給、気温・湿度の調節など)、「人類の暮らしの基盤(食べ物、木材、医薬品など)、「豊かな文化の根源」(地域性豊かな文化、自然と共生してきた知恵と伝統)などを揚げています。単純な自然ではなくて「多様」な自然、そこんとこヨロシク!
しかし、現在最高1000万種(諸説あり)とも言われる地球の生物の種のうち4万種(諸説あり)近くが1年間に絶滅しているのだそうです。これは単純に割り算すると、250年後には、地球上の生物が全て絶滅してしまうぞ〜。ま、そんなバカなことはあり得ないと思いたいのですが。
その原因はというと・・・
「開発や乱獲による種の減少・絶滅」 → 鑑賞や商業利用のための乱獲、過剰な採取や埋め立てなどの開発による生息環境の悪化や破壊。
「里地里山などの手入れ不足による荒廃」 → 自然の質の低下、二次林や採草地が利用されなくなったことによる生態系バランスの崩壊、里地里山の動植物の危機。
「外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱」 → 外来種が在来種を捕食したり、生息場所を奪ったり、交雑して遺伝的な攪乱をもたらしたりしています。また、化学物質の中には動植物への毒性をもつものがあり、それらが生態系に影響を与えています。
そして・・・
「地球温暖化による世界的な危機」 → 気候変動や大規模な生息地の破壊による、多くの種の絶滅や生態系の崩壊。
などなど、様々なことが原因で多様性が危機にさらされています。言うまでもなくそれらは全て人類の活動によるものです。
しかし、わざわざ国際会議を日本で開くまでもなく、こんなことも出来ないの?! ということが沢山あります。このコラムでも何度も取り上げた移入種の問題ですが、せめて趣味や愛玩飼育を目的とした野生生物の輸出入を即刻中止すればよいのに、そういう動きはほとんどありません。理解に苦しむところです。温暖化の対策に向けても、やるべきことはたくさんあります(前号参照!)。
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さて、再来年の2010年は、国連が定める「国際生物多様性年」ということで、私たちの暮らし方や社会のあり方と、地球で暮らして一緒に進化してきたはずの他の生物たちが、未来永劫一緒に心地よく暮らしていける道筋を考えられたら良いですね。そのために、どんな対策が出来るのか、人類の知恵が試されています。酒を飲みつつ、ない知恵を無理矢理絞り出しましょう! 人類の一人として。
(2008年・秋)